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見境ないオタク

アニオタ・ドルオタ・腐女子という三重苦と共に生きています

父についてウソのような本当のオカルト話





わたしの父はUFOを信じている。
ネッシーを信じている。
雪男を信じている。
秘密結社を信じている。

しかしもう異次元は信じていない。






私が物心ついた時から父はいわゆるオカルトマニアだった。

寝室の箪笥の上には大量のムーが鎮座し、普段はテレビに頓着しないのにユリ・ゲラーが出る番組だけは必ず見た。
フリーメイソンイルミナティなどの秘密結社について話す父は何をするよりも楽しそうだった。



そんな父が一番傾倒していたのが、異次元だった。

五次元、アセンションという言葉を聞いたことがある人はあまりいないかもしれない。私はずっと昔から父がこれらの話をするのを聞いていたがそれでも詳しくはわからない。

ともかく父は異次元、精神世界に対して関心を強く持っていた。
偉大なる預言者の天変地異の予言や次元が上昇することで精神が重要となることなどを私たちに話して聞かせた。
スピリチュアルCDを聞きながら二階の部屋で一人仰向けで寝ながら手を合わせているのを見たときは流石に肝が冷えた。




そんな父が、突然自分の本を全て処分すると言いだした。

父が買ってきた本は言うまでもなくスピリチュアル関係のものばかりで(私たち家族はそれをスピ本と呼んでいた )、中には絶版となった物をオークションで高値で購入したものも数冊あった。全て合わせると数十冊はあった。

煙草も酒も普通のものだけ、酒は発泡酒と安い焼酎で十分と言い、好きなスポーツがある訳でもない、贔屓の球団もない、お洒落にも無頓着で休日には庭の草むしりをするか昼寝をするかスピ本を読むかだった父が、そのスピ本を捨てると言った。

他の家庭の父親を見たことがないから何とも言えないが、スピ本を手放した父はあまりにも何の特徴もない、摑みどころのない、一気に遠い存在になってしまったように感じた。





そもそも父はなぜスピリチュアル系に傾倒していたのか。
母に聞いたが、結婚する前からギリシャ神話や古事記UMAなど不思議なものが好きな人だったらしい。母は自分の知らないことを知っているところにも惹かれたとか。まさか惚気を聞かされるとは思ってもおらずゲンナリした。


父がスピ本を手放した理由の一つに考えられるのが、父の妹(つまり私の叔母)である。



父の妹は一卵性の双子だ。盆正月くらいしか会わないが、顔の見分けはほとんどつかない。話していても同じ言葉を同時に言ったり相槌も全く同じであったりする。

そんな双子の叔母は昔からよく同じ夢を見たり同じ言葉を夢の中で聞いたりしていて、それを父に話して聞かせていたそうだ。

そして父の実家は、田舎の中でも田舎と言ってもいい山の中で、先祖や霊に対する信仰が強い。お墓は家のように屋根や扉が付いていて、仏壇も仰々しくそれとは別に仏様が数体いる。


双子の理解しがたいシンクロと土地柄から父は不思議なものに対する興味を持ち始めたのかもしれない。


父がスピリチュアルに傾倒するきっかけも父の双子の妹だったが、父をスピリチュアルから遠ざけたのもまたその妹だったと考えられる。





父は今年の春、突然京都に行くと言い、間も無くして京都に飛んだ。






父の双子の妹の一人は一度離婚しており、地元の人と再婚した。しかし、再婚してすぐ二人は京都に移った。

その理由が、妹が聞いた「お告げ」だった。ウソのような本当の話である。私も身内じゃなかったら信じていない。


妹のお告げによって京都に飛んだ夫婦は、しばらくして父にある文書を送ってきた。彼女は書道を嗜んでおり、それはそれは達筆なもので父は私にそれを解読してほしいと頼んできた。
その内容が漢文のようなもので、レ点や一二点で書かれたその文書は妹が京都のとある場所で見つけた書物の複写らしかった。
国語の成績だけでギリギリ生きてきた私なら漢文も読めるだろうと父は私に頼んできた。

しかし、その文書は内容がちぐはぐで、書き下しにしようも出来ないような文がほとんどだった。日本史で出てきたような人名位しかわからないような一説もあった。

一応ノートに一通り書き出して父に渡し、これ以上解読しようとしても無駄ではないかと説明した。それほどまとまりがなく、意味があるとは思えない文だった。

そんなこんなで父は京都に飛んだ。後から聞いた話だと妹に呼ばれ至急行かねばならぬと飛んだらしいが、その時は私達家族には何の説明も無く突然京都に行ってしまい、もしやこのまま帰ってこないのではとちょっと思ってしまう程の勢いだった。


そしてそのまま2、3日音沙汰も無く連絡も取れない状態だったが、突然「帰る」とだけ連絡を寄こし、飛行機に乗る金が無いから振り込んでくれないかと言った。父は計画性が無い訳ではない。帰りの旅費のことを考えていなかった位急ぎで京都に行ったのだろう。


そして父が我が家に帰るとすぐ、スピ本を全て捨てると言いだした。



父は、自分で自分のことを神と言う人は信用ならない、としか私達には言わなかった。








ダンボール数箱分にもなるスピ本はブックオフで千円足らずにしかならなかった。


それでも父はなんの未練もない顔をしていた。






間も無く妹夫婦は京都から実家に帰ってきた。噂によれば旦那が無理やり連れ戻したとか母(私の祖母)が呼び戻したとかなんとか。今は実家で祖父母と旦那とで暮らしているらしい。





スピ本を捨ててから、父の休日は草むしりか寝るだけになった。




私達家族は父がスピリチュアルマニアだったことを別に嫌がってはいなかった。むしろ面白いと思っていたし度々お互いネタにしていた。頭大丈夫かな〜と思いながらも父がまともだとよく分かっていたからこそ本人を前にネタにもできたし友人にも笑い話として話せてきた。


だからこそこれからの父のことを思う。スピリチュアルを捨て、スピ本を捨てた父はこれから夢中になれるものができるのだろうか。





今、父はマツコデラックスがお気に入りだ。バラエティを毛嫌いしていた父を思うと謎ではあるがマツコデラックスが出る番組は欠かさず見ている。
私がお熱のHey!Say!JUMPにも詳しくなり、私がしつこくライブDVDを見るせいか最近の鼻歌は専らカモナマイハウスかマジサンシャインである。カモナマイハウスに至っては若干踊れる。
重版出来に出ている最上もがを見て、最上もがを知ってる50代も中々おらんだろうと満足気だ。



今でも不思議なものは好きで、隙あらばディスカバリーチャンネルの怪しげな番組を見ようとしたり本当にあった呪いのビデオを朝イチで楽しそうに見ている。寝起きで心霊映像がテレビに映っているのを見る羽目になる娘は寝覚め最悪である。



父はスピ本を手放してから少し寂しげではある。父が京都で何があったかは知らないし、今後知ることもないだろう。
でも、スピ本を手放したからと言って憑き物が落ちたとかそういう訳ではないし張り合いがない父が嫌だという訳でもない。父は変わらず父だ。


特段裕福な家庭でもないしど田舎に産まれ美人にもならなかったが、私はこの家に、父の娘として生まれて幸せだったなーと思う。
生まれ変わってもまたこの家庭に産まれたいと思う程度には満足している。たとえ来世では父の天パを遺伝したとしても。欲を言えば来世ではもう一踏ん張りして美人に生まれたい。


父の日を前に父に対するデレとウソのような本当の身内オカルト話を書いてみたが、これが父の目に触れることもないだろうし直接言う気もさらさら無い。墓まで持っていく所存だ。

だから今年の父の日にはちょっと良い値段のする焼酎グラスでも買ってあげようと思う。

去年は安いタオルで済ませてごめんやったけど、今年は期待しとけよ!