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見境ないオタク

アニオタ・ドルオタ・腐女子という三重苦と共に生きています

江戸川乱歩「孤島の鬼」をホモ好きにはどうにかして読ませたい

語らねばなるまい…




江戸川乱歩『孤島の鬼』をご存知だろうか。

孤島の鬼 (江戸川乱歩文庫)

孤島の鬼 (江戸川乱歩文庫)


江戸川乱歩作品の中では一般的にメジャーとは言えない作品だがある一定の層には知られた作品である。
そう、ホモ業界ではね。

正直この作品もうホモって言ってもいいんじゃないでしょうか。ホモです。

あと先に言っておきます。今回話まとまる自信ありません。分析でも考察でもなくお願いだから孤島の鬼読んでくださいという記事です。



簡単に概要紹介といきたいのですがこちら部類としてはミステリーホラー?なのかな?ネタバレするのはどうかと思うのですがでも多少はしないとこの記事書けないのでちょっと許していただきたい。この作品はミステリーというよりも読み物として面白い作品だと思うので、ガッツリネタバレされても面白く読める作品です(人で確認済み)。ネタバレが本当に嫌な方は先に本読んでください!面白いから!!!

以後がっつりネタバレ含む





この作品の大きな特徴は一つの長編小説の中に恋愛・殺人・冒険という三要素が含まれている点ではないか。しかしそれを押しのける勢いで存在感を放つのがそう、みんな大好きホモ要素である。
簡単にホモポイントをかいつまんで説明する。

・主人公は美青年
・主人公の婚約者に何故か言いよる学生時代の先輩(元医大生)
・先輩はホモで学生時代主人公は掘られかける
・紆余曲折あって大人になって行動を共にする
・2人きりの死の淵で再び迫られる

あとラストに完全ホモポイントがこれは後で書きます。
正直この一覧を見ると同人誌?と言わざるを得ない。ホモ同人誌じゃん…!

今回この記事では「孤島の鬼」の登場人物と乱歩の共通点から余計な妄想を働かせていきたい。

数ある江戸川乱歩作品の中で「孤島の鬼」だけがホモなのか?という問いに対しては簡単にそうですとは言えない。読む人間によれば少年探偵団シリーズもホモである。明智と小林少年、私にかかればホモにすることも容易い。しかし本作「孤島の鬼」は作中で登場人物に対する紹介で同性愛という言葉が明言されており、このような作品は他の江戸川乱歩作品には見られないのではないか。もしあったら私の勉強不足です。すみません。

「孤島の鬼」のホモ的登場人物をもう一度詳しくおさらいする。
・私(簑浦金之助)
主人公 物語の書き手 美青年 白髪 二十代半ば
ノンケ 商社勤め 男に気に入られがち
・諸戸道雄
簑浦大好き 元医大生現研究家 ハンサム 
三十路 ホモ 

いかがでしょうかこのスペックどこのホモ誌でしょうか。
ここで注目していただきたいのは、主人公である私(簑浦金之助)のスペック『物語の書き手』という点だ。

ここで少し用語を説明する。文学理論家のジュネットによれば、物語論の焦点化は大きく「焦点化ゼロ」「内的焦点化」「外的焦点化」の三つに分けられる。

まず一つ目の「焦点化ゼロ」は、
二人以上の内面描写や複数の時間・場所が書かれたものである。神の視点とも言われる。
二つ目の「内的焦点化」は、登場人物の視点で書かれたものである。一人称(私、僕等)で展開されるものが挙げられる。
三つ目の「外的焦点化」は、作中の人物の外面のみが書かれたもので、セリフ・行動等以外の内面描写がないものが挙げられる。
この「孤島の鬼」は二つ目に挙げた「内的焦点化」に当たる。

さらに「内的焦点化」を分類すると、
一人の登場人物が語り続ける「内的固定焦点化」、複数の人物が語る「内的不定焦点化」、ある一定の出来事を異なる視点で語る「内的多元焦点化」に分けられ、「孤島の鬼」は「内的固定焦点化」に当たる。

先ほど主人公のスペックで『物語の書き手』と述べた。
この小説の構成の特徴として、『主人公が過去の体験を記述している』という点が挙げられる。

この作品のはしがきの内容は、
主人公である私(簑浦金之助)が三十にもなっていないのに白髪になったのは過去の恐ろしい経験が原因でありそれをいちいち説明するのが面倒なので一冊の本にまとめることにした、というものである。
つまり、はしがき以降のこの作品は
現在の私(簑浦金之助)が、過去の出来事を振り返りながら書いたノンフィクション
という設定なのである。

そしてまたここで登場人物二人のスペックを思い出していただきたい。

・私(簑浦金之助)
主人公 物語の書き手 美青年 白髪 二十代半ば
ノンケ 商社勤め 男に気に入られがち
・諸戸道雄
簑浦大好き 元医大生現研究家 ハンサム 
三十路 ホモ 

そう、
こちら全て彼の主観からきてます!!!

職業柄や年齢はともかく美青年とか男に気に入られがちとか諸戸が自分大好きとか全部簑浦の主観です!!!!なんておめでたいやつだ!
普通に読むだけではなく焦点化を頭に入れると簑浦のスペックに『おめでたいやつ』を追加することができる。それだけで彼が100倍かわいく見える。オタクの皆さん、このテクニックあなたの推し作品で使ってください。


話を戻します。

ここから「孤島の鬼」の登場人物と乱歩の共通点から余計な妄想に入る。

そもそもなんで乱歩はこんなホモ小説を書いたのか。
昭和二年は乱歩が書き物をしなかった年である。その昭和二年に始まったのが同性愛古文献漁りである。「孤島の鬼」の初出は昭和四年雑誌「朝日」創刊号。研究の末の作品と言ってもいいだろう。
そもそも乱歩の初恋が十五歳の頃の同性であったこと(八歳のはノーカンだと本人も言ってたのでノーカンとする)は結構有名なのだが、そんな乱歩が描く同性愛文学、相当気合入ってるはずだ。
そしてここで昭和二年に同性愛古文献漁りを一緒にしたという岩田準一をとりあげる。
岩田準一は画家兼風俗研究家で乱歩の「パノラマ島奇談」などの挿絵を担当し、乱歩と友人関係を持っていた。



乱歩と岩田の関係性・各々のスペックを簑浦と岩田のそれと比較してみる。

【乱歩と岩田】
乱歩の自伝によると、岩田は乱歩より「七つ八つ年下であった」。そして他文献によれば岩田は美青年であったとされる。乱歩は自身の自伝に「恋愛不能者」の項を設ける程には幼い時からの教育もあり女性、殊更女性との性交に対して嫌悪感を持ち合わせていた。

【諸戸と簑浦】
諸戸は簑浦よりも六つ年上で、簑浦は自称ではあるが男を取り込む程の美青年だった。諸戸は作中過去、「十歳を越した時分から、絶え間なく母親のために責めさいなまれ」「あらゆる女性をきたなく感じ、憎悪するようになった」とある。


また諸戸も「異様な魅力を持つ容貌」とされるほどにはハンサムガイなのだが、岩田だけでなく乱歩もかつてはなかなかの美少年で「なかなか色っぽかったものである」らしい(自伝での自称なので真偽は計り兼ねるが)。


ここからは根拠もない腐女子の詮索だが、乱歩が学生時代初恋の相手とし肉体関係をも覚悟した相手はもちろん美少年なのに加えて「画が上手」だったとある。岩田は画家で乱歩作品の挿絵も手がける。

どうですか。


これだけで色々と憶測するのは学術的には良しとはされないだろう。それ以前に人物間の関係性においてもっと注目すべき点があるのも分かる。だが私は腐女子である。ここは気持ち悪い視点で読書する場である。つまりそういう視点でどうしても見たくなる。本能である。許していただきたい。

この作品のセールスポイントは、ホモ好き女からすると乱歩のプライベートなホモエピソードまで妄想しながら読める一度で二度美味しい作品なのである。


何度も言うが「孤島の鬼」はホモ要素を差っ引いてもめちゃくちゃ面白い作品である。映画化もされているがあれはパノラマ島奇談などとも合体してるのでとりあえず本から手を出して欲しい。最近某御刀ミュージカルに出ていた俳優さんで舞台化もしていたらしいがそちらはついこの前知ったものであまり存じ上げてない。僕と簑浦にそれぞれキャストが付いていてどういう構成になっているのかとても興味があるので機会と財布に余裕があったらDVDを購入してみようと思う。僕の語り進行で過去の出来事を見せていく構成なのかな…。何れにしても面白そうである。


この作品の面白さが少しでも読んでる方に伝われば万々歳、五体投地である。

ここまで読んでいただきありがとうございました。これを読んでくださったホモ好きが一人でも「孤島の鬼」を手に取っていただけることを超本気で願っております。


さて、後で書くと言っていたラストのホモポイントについて。ここは本当のラストシーンなので作品を読む前に知りたくない方はここで以上となります。ありがとうございました。












ではラストシーンについて







この作品のラストは、諸戸が死んだことを諸戸の父からの死亡通知書から知るというものである。
最後の一文である諸戸の父からの死亡通知書を引用すると

「道雄は最後の息を引き取るまぎわまで、父の名も母の名も呼ばず、ただあなたさまのお手紙を抱きしめ、あなたさまのお名まえのみ呼びつづけ申し候」




どうですか。切なすぎでしょう。学生時代から片思いし続け、一度は簑浦から殺してしまいたいとまで言われ、数々の困難を共に乗り越え、死の淵で泣いて簑浦に迫るも全力で拒否され逃げられる、それでも最後まで簑浦を愛し続けた男の末路がこれです。涙を禁じえない。辛い。

このラストだけでも充分お腹いっぱいなのですが、ここで一つ思い出していただきたい。

この作品は「内的固定焦点化」である私(簑浦金之助)の過去の出来事を振り返りながら書いたノンフィクションという設定である。

つまり簑浦は、この一大事件を記した作品の締めくくりとして諸戸の死を選んだのである。
そしてその一文は、諸戸が死ぬまで自分の名を呼びつづけたというもの。
もうこの作品を読みながらずっと言いたかった言葉を言わずにはいられない。



お前やっぱりまんざらでもなかったじゃねえか!




もうこれは腐女子からすれば完全にホモでファイナルアンサーだと思います。



以上で終わります。
ありがとうございました。